「ズンだけ聞いてりゃリスニングは楽勝じゃね?」と言いたくなる気持ちは痛いほどわかります。チャ の部分は速く・短く発音して、しかもつながったりするので何を言ってるかわからない。ズン を含む単語が重要な情報を含む単語であるならば、言いたいことはだいたいわかりそうですしね。
それでは前回のエントリーの『メアリーは公園でトムを蹴りました』という日本語の例文で考えてみましょう。日本語で チャ にあたるのは助詞・助動詞になります(= 機能語)。色分けすると『メアリーは公園でトムを蹴りました』になります。そして緑文字を消すと『メアリー公園トム蹴り』になります。これで意味が通じるでしょうか。意味が通じるか通じないかと聞かれれば「通じます」と答えますが、話し手が言いたいことがちゃんと通じているかいないかと聞かれれば「通じていません」と答えることになるでしょう。なぜなら『メアリーを公園でトムは蹴りました』『メアリーは公園でトムを蹴りたいと思っています』『メアリーを公園でトムは蹴りたいと思っています』『メアリーは公園の近くでトムを蹴りました』と複数で理解することが可能だからです。
以前こう説明したときに「でも、英語は日本語と違って単語を置く順番が決まっていて、Mary kicked Tom park. になるから、『メアリーがトムを蹴った』っていう本質は伝わりますよね」と言ってきた生意気な賢い生徒がいました。はい、よく勉強していますね。
しかし、本当は "near the park" だったらどうでしょうか。確かに本質的な情報ではないかもしれません。ところが、「フツーは "in the park" だよね」と考えてしまったために、途中で "park closed" と聞こえたときにパニックになる、という中高生は少なくないと思います。
このように、『ズンだけリスニング』の欠点は抜けている部分を自分で勝手に補う、というところにあります。